接客業を続ける違和感と、それが無力感に変わった時。
2017/12/20
※筆者の愚痴と偏見が多分に含みます。一つの「読み物」として捉えて頂けるとありがたいです。
違和感への気付き
接客をやっていた時はとにかく楽しかった。
多くの人とふれあい、「ありがとう」と言ってもらえるだけでテンションが上がる。自分が人の役に立っていると実感ができるこの仕事は実にやりがいがあった。
それでも、仕事に慣れ、まわりのことが見えるようになってくると、あることに気がつく。
何も知らなくても、何も考えていなくても、やる気を見せている「フリ」だけで一日が終わる。
業務が深くなる(今思えば全然深くともなんともない)につれて、「上手くその場をやり過ごす」日が増えていないだろうかと自問する日々。なにせまわりのフラフラしている連中の2倍の速度でテキパキ接客をしても、お給料にはほとんど反映されないし。
査定なにそれ?みたいな「成果」をフィードバックしてくれる制度が自分の会社にはなかった。まあ無理もない話で、特に大手チェーンになってくると、店舗数も膨大になって、全国のあちこちにお店がある。当然お店の規模も所属している人数もバラバラだから、公平な査定制度なんて作れっこない。せいぜいその店のトップ「店長」とか「エリアマネージャー」みたいな幹部クラスの査定があるくらいだろう。小売業という業種そのものが「査定のしにくい」仕事だと気づいたのは、転職した後のことだった。
小売業は「何を売っても良い」=提案力が身につかない
当時は気が付かなかったが、業務は実に簡単なものばかり。
お客の顔色を伺い、機嫌を損ねない程度に利益率の高い商品をオススメする。ただそれだけ。
極端な話どの商品が売れても良いのだ。これが営業と接客小売の大きな違い。営業は売るものが決まっている。上から決められた「コレ」というものだけを提案していかなければならない。対して小売の接客は、「コレ」という決まったものだけを売る必要はない。利益の大小こそあれ、極端な話、棚に並んでいる商品ならどれだって良い。
そしてそれを「提案」していかなければならない。営業は0から1を作る仕事とも言える。接客販売はその店に来ている時点で「提案」はほぼ終わっている。客は少なくとも何かを買ったりサービスを受ける前提でおみせに来ているのだ。1は1のまま。
接客のテクニックとやらである程度のコントロールはあっても、0から1を作ることは絶対にできない。そこには計画も、カレンダーもあったものじゃない。全てがその場しのぎだ。
今日は1台しか売れなかった。昨日はたくさん売れた。明日は何台売れるかわからない。その繰り返し。「結果」というふたを開けてみれば、そこにはなんのパワーもない結果論という数字がころがっているだけ。
これが接客の仕事だ。内部にいると気づきにくいが、外からみれば、この仕事には「接客」というワードへの違和感が出て来る。
接客小売によくある「責任者」という役職だって、何に対しての「責任」なのかもわからない。コントロールなぞしていない接客に、提案なんてない小売店という形態に、責任はとりようがない。たくさん売れたら「当たり前」全然売れなかったら「責任を取れ」とただの上層部からのクッション材だ。「責任」は仕事をなしとげる一本道をつくるものに対する「評価」であって、業績悪化の時のサンドバッグではないのだ。
「1日に長時間働く奴=偉い」という謎の風潮
仕事は時として残業を積み重ねてでも結果を出さなければいけない時がある。どんな職に付いたとしても、これは変わらない。
ただし、ここが一番ミソなのだが、接客業・販売業の多くが「アルバイトレベル」の頭を使わずとも身体だけ動かして居ればなんとなく「仕事」として扱われてしまうこと。
その長時間拘束されて行った業務は、未来の自分に対して何の経験、知見も与えてくれないということだ。
それでも忙しさから考えることを止めず、マシーンのように働き、アルバイトから数えて6年目、7年目と月日はあっという間に流れ気がつけば中堅上位の社員となっていた。
残業が月間100時間オーバーは当たり前、イレギュラーなクレームが発生すればその対応のため150時間残業をマークすることもあった。
それでも、「150時間も残業して、偉い!」という社内の風潮に飲まれ、そんな自分に酔ってもいた。
しかしふと休日になると、出かける気もおきず、スマホゲーやネットなど、家の中で過ごせる趣味ばかりの自分が居て、「このままで良いのか」と自問自答している日々。
この業界は入ってくる人間も多ければ、出て行く人間も多い。
今思えば、マトモな思考のできる奴は3年経たずに辞めていった。
5年やっていれば立派な「中堅」。10年続けると「古参」と呼ばれる。ただしこれは他の業界ではありえない。
なぜなら、「知見の蓄積」によってその人が持つ含みみたいなものが出てきて、それが結果として業界の浅い人を上回るから「中堅」、そしてその中堅を束ねられるから「古参」と呼ばれるべきなのだ。
一般的な営業職、企画職なら「中堅」と呼ばれるのは15年くらい経ってからであるし、「古参」なんて貫禄のある呼ばれ方をしても恥ずかしくない歴には30年近い経験が必要だろう。
まぁ、残業代だけはきっちり出る会社(何度も労基に入られてやっと、という残業代だったが。)割と貰えたのが救いか。残業代で誤魔化され、20台半ばで既に年収が500万に届くかという所まで来ていた。
当時は何も考えていなかったので、350万くらいの平均年収の大学同期との年収差に優越感を感じていた。
簡単な話で、「人より2.5倍時間を拘束されたから人の1.5倍の給料が出ていた」だけなのだ。他の小売業の皆はこの残業代すら出ていないところも多いと聞く。自分はまだ恵まれていた方なのかもしれない。
違和感が、「無力感」に変わった直轄役員の「一言」
私が居た家電小売業界ではお正月の「初売り」は大事なイベント。
特に大事な、大きな売上が見込める店舗へ出張派遣されるのは、栄転へのステップとされていた。私も手前味噌だが「デキる」方であったので、この出張応援派遣に選ばれた。
該当店舗の人間と協力して、バックアップをする大きな仕事。たくさんの物を売ってお客さんに、メーカーさんに喜んでもらえるチャンス。
こう息巻いて私は応援メンバーの中心核として、店舗のメンバーと積極的に初売りに向けた売り場改装を進めていた。
そして大晦日になって、役員が売り場視察に訪れた。私は現場の皆で考えた最高の売り場展開に、きっと気に入ってもらえるに違いないと思っていた。しかし、次の一言に私は耳を疑った。
「誰だ、勝手に売り場の配置を変えたのは?困るんだよね、現場に無駄に頭使われるの。現場は黙って俺達が用意したもの売れば良いんだよ」
ちなみに売り場の配置などは現場の判断で適時お客さんに飽きられないように工夫されるのが良しとされていて、私は規則を破ったのではない。最もショックだったのは「現場は頭をつかうな」のこの一言だったのだ。出張から戻ってこの話を上司にすると、さらに失望は大きくなった。
「考えるのを止めて、マシーンになりきれた奴が上に行くんだ。考えを巡らせるやつは、この世界には必要とされないんじゃないかな」と。
これは後に役員だけでなく、味方だと思っていたメーカー営業さんにも似たような事を言われるのだが、参考リンク:◎◎ 当時の私は一気に情熱が冷めていくのを感じた。上層部は、現場はレジ打ちや商品の品出しを黙ってしていれば、あとは誰でも良かったのだ。頭を使うなどもってのほか。
頭空っぽで指示を再現してくれる奴だけ居ればいい。そう思っていたのだ。役員も馬鹿ではない。きちんとした販売計画や経営計画があり、その中で現場の販売社員は頭を使ってほしくないと悪意なくそう思っていたのだ。俺達はその時、将棋の駒ほどの価値も無かった。駒で例えるなら、歩が右に進むことなど考えるな、ということだ。
一気に熱が冷め、そしてこのまま目前に迫った30代はともかく、40代、50代になっていく自分が想像できなくなった。
あれだけ毎日言い返せないクレームに耐え、長時間労働に耐え、圧倒的な物量の入荷に対してのメーカーさんからの圧力(他所のじゃなくてうちの商品を早く並べろよ!みたいな)に耐え、それでも「頭を使い成果を出すこと」にやりがいを見出し頑張っていた毎日はなんだったのだ。「頭を使うな」の一言が、私を転職へと決心させた。「接客業から転職したい、接客辞めて、新しいスキルを磨き直したい」と。
「辞めたい」という気持ちに逆らうべきじゃない。もし気がついた年齢がが30代だったとしても、40代だったとしても、絶対に自分は今のように転職に動いていただろう。違和感に気がついたらすぐに動く。上司や先輩の「もったいない」や「逃げるのか?」の言葉には耳を貸すな。そいつらは「接客」をやってる人間だ。どうせその言葉には大した意味なんてないよ。
次回:なぜ転職活動に半年以上もかかってしまったか?たったひとつの大きな間違い
お世話になったエージェント様
リクルートエージェント
ともあれ最大手のエージェントさん。わたしが一番最初に登録したところで、いろいろと良い意味で転職するにあたって衝撃を受けた会社。ここのインタビュアー※求人紹介の前に、転職希望者の面談をしてくれる人はとにかく褒める。そんなにホメられたらからだがムズムズしちゃいますよ、というぐらいホメてホメてほめまくってくれる。経歴ややりたいことを気分よく話せるし、これでもかとあいづちをうって真摯に聞いてくれるが、ホメられたことを面前のまま受け止めるとかんちがいを引き起こすので注意が必要。開かれた求人からクローズ案件までとにかく求人量がすさまじい。質より量な印象があるので、自分で瞬時に判断するヤル気が必要だが、求人が来すぎて悩むなんてのは贅沢な話かも。
DODAエージェント
全体的に温かい印象の強いエージェントさん。私が利用したときは改修中だったのか専用フォームからではなく、メールでのやりとりが中心だったのを覚えている。送られてくるメールもコピペ対応ではなく、それぞれ案件ごとにコメント貰えたりして、とても親身だったのが印象的。担当になってくれた人は良し悪しをはっきり言ってくれる人で、何事もこざっぱりと直球で言ってくれたのがかえってありがたかった。販売サービス系へ入るための転職にも強みを持っていて、これは「接客業経験者の扱いにも慣れている」ことの証明でもある。
キャリコネ転職サービス
ここは事前面談がなく、キャリアシートのみの登録でサクッと始まる中小規模のサービス。「キャリコネ」という会社OBが年収から待遇から生々しく語るサイトを利用したひとは結構多いのではないか。そこが運営するエージェントサービス。こざっぱりしたホームページからは想像も出来ない熱い、熱意を持った担当さんが付いてくれたので良い意味で意表を付かれたエージェントさん。私の経歴にたまたま合ったのもあるのだろうが、非公開求人を積極的に紹介してくれた印象が強く残っている。紹介してくれる案件もウィットに富んだものが多く、他のエージェントさんとの差を付けるために様々な施策を組んでいて、熱意がこちらまで伝わってくる。実際に案件紹介をしてくれるプロジェクト担当さんは人によってトーンが違い、たまに妙にサバサバしてる人がいたりもするが、それを補ってあまりある採用活動のサポート力があった。